クロスドメイントラッキングの設定・計測方法
- 2020.09.18
- Googleアナリティクス
- トラッキングコード
こんにちは、アクセス解析&SEO分析ツール「アナトミー」開発チームの小野です。
Googleアナリティクスは、基本的に1つのドメインを分析できるようになっています。そのため、複数のドメインを統合的に分析することができません。
クロスドメイントラッキングの設定を行えば、複数ドメインを1つのビューにまとめ、統合的な分析ができるようになります。
この記事では、クロスドメイントラッキングの設定方法を解説します。
- 関連記事:Googleアナリティクスとは?
- 関連記事:ドメインパワーとは?基本とSEOへの影響
クロスドメイントラッキングとは
クロスドメイントラッキングとは、ドメインが異なるサイト間で、Googleアナリティクスのセッションを共有する計測方法のことを言います。
クロスドメイントラッキングを行うと、例えばサービスサイトとブログが別ドメインのときに、ブログからサービスサイトに遷移したユーザーの流入元などを分析できるようになります。
Googleアナリティクスの標準的な使い方では、1つのドメインを分析することを想定していますが、クロスドメイン対応を行うと、このような高度な分析ができるようになります。
クロスドメイントラッキングの仕組み
Googleアナリティクスは、cookieを使いユーザー識別情報を保持していますが、異なるドメインへはcookieを引き継ぐことができません。そこで、異なるドメインへのリンクに_ga
と呼ばれるパラメータを付与することで、ユーザー識別情報を別ドメインに引き継げるようにしています。

また、異なるドメイン間で情報を共有するため、同一のトラッキングIDを利用します。
クロスドメイントラッキングでは、上記の仕組みを利用し、ドメインをまたいだアクセス解析を実現しています。
クロスドメイントラッキングのメリット
クロスドメイントラッキングを導入すると、関連するドメインを統合してGoogleアナリティクスで分析できます。
たとえば、ブログとECサイトをクロスドメイントラッキング対応すると、ECサイトで購入したユーザーがどのブログ記事から流入したかをGoogleアナリティクス上で分析できるようになります。
また、ショッピングカートが別ドメインという場合も、コンバージョンに至った経路を正確に分析できるようになります。
つまり、複数ドメインのサイトでも、1つのドメインのサイトと同じような分析が可能になる点がメリットです。
クロスドメイントラッキングのデメリット
過去データとの継続性がない
クロスドメイントラッキングでは、クロスドメイン専用のプロパティを新しく作成してデータの蓄積を開始します。
そのため、過去のページビュー・コンバージョンといった情報は新しいビューには記録されていません。
過去のデータを分析したいときは、従来から利用しているプロパティ・ビューを参照するようにしてください。
トラッキングコードの変更が必要
クロスドメイントラッキングを導入するには、クロスドメイントラッキングを行うすべてのドメインに対してトラッキングコードの変更が必要です。
サイトの規模や構成によっては、作業規模が膨大になる可能性があります。
また、トラッキングコードの変更ができないCMSやショッピングカートを利用している場合は、導入ができない可能性もあります。
なお、既にGoogleタグマネージャーを導入している場合、トラッキングコードの変更は比較的容易です。
クロスドメイントラッキング設定の流れ
クロスドメイントラッキング設定には、大きくわけると2つの作業があります。
- Googleアナリティクスの設定を変更し、クロスドメイン専用のプロパティ・ビューを作成する
- トラッキングコードをクロスドメイン対応する
それぞれの設定作業を詳しく解説します。
Googleアナリティクス設定をクロスドメイン対応する
クロスドメイントラッキング用のプロパティを作成する
まずは、Googleアナリティクスの設定です。
クロスドメイン設定を行うと、これまで蓄積されたアクセス記録との整合性が取れなくなってしまいます。影響範囲が大きいので、現在使っているプロパティはそのまま残しつつ、新しいプロパティでクロスドメイン対応するやり方をお勧めします。
次の手順で、現在使っているプロパティとは別に、クロスドメイントラッキング専用のプロパティを新しく作成します。
- Googleアナリティクスの管理画面を開き、[プロパティ作成]ボタンをクリックします。

- 「ウェブ」を選んで[次へ]をクリックします。
![「ウェブ」を選んで[次へ]をクリックします](https://blog.siteanatomy.com/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
- ウェブサイトの名前は「クロスドメイン」、その他はいずれかのサイトの情報を入力します。

これでクロスドメイントラッキング用のプロパティが作成できました。
ホスト名を連結するビューフィルタを設定する
次に、新しく作成したプロパティのビューのフィルタ設定を変更し、「ホスト名連結フィルタ」を追加します。
クロスドメイントラッキングでは、複数のドメインが1つのプロパティを共有することになります。ホスト名連結フィルタを追加すると、Googleアナリティクスでページを分析するときに、/foo.html のようなドメイン名を含まないパスではなく、 example.com/foo.html のようにドメイン名を含むパスで表示されるようになります。
- 管理画面のビュー列で「フィルタ」メニューをクリックします。
- [フィルタを追加]ボタンをクリックします。

- 「ビューにフィルタを適用する方法を選択」で「新しいフィルタを作成」を選択します。
- 「フィルタ名」に任意のフィルタ名(例:ホスト名連結)を入力します。
- 「フィルタの種類」で「カスタム」を選択し、「詳細」のラジオボタンを選択します。
- 「フィールド A」を「ホスト名」、「引用A」を
(.*)
、「フィールドB」を「リクエスト URI」、「引用B」を(.*)
、出力先を「リクエスト URI」、構成を$A1$B1
に設定します。

- [保存]ボタンをクリックします。
これで、フィルタの設定が完了しました。
参照元除外リストへドメインを追加する
次に、新しく作成したプロパティのプロパティ設定(参照元除外リスト)を変更します。参照元除外リストは、「ドメインをまたぐ遷移」を新規セッションと判断しない(同一セッションとみなす)ために設定します。
- 管理画面のプロパティ列で [トラッキング情報]>[参照元除外リスト]をクリックします。

- [参照の除外を追加]ボタンをクリックします。

- クロスドメイントラッキングの対象ドメインを入力し、[作成]ボタンをクリックします。

全てのドメインを参照元除外リストに追加したら完了です。これで複数のドメインにまたがって行動したユーザーの参照元が分かるようになります。
トラッキングコードをクロスドメイン対応する
Googleアナリティクスの設定が終わったら、今度はトラッキングコードをクロスドメイン対応します。
トラッキングコードの修正内容は、Googleタグマネージャを利用している場合と、トラッキングコードをHTMLに埋め込んでいる場合とで異なります。それぞれの手順を解説します。
Googleタグマネージャーでクロスドメインを設定する
以下の手順で、クロスドメインのトラッキングタグを追加します。
- Googleタグマネージャの管理画面で新しいタグを作成します。
- タグ名には任意の名前を入力します。
- タグの種類として「Google アナリティクス: ユニバーサル アナリティクス」を選択します。
- [トラッキングタイプ]は「ページビュー」のままでOKです。
- Googleアナリティクス設定の下の「このタグでオーバーライド設定を有効にする」をチェックし、[トラッキングID]欄にクロスドメイントラッキング用のトラッキングIDを入力します。Googleアナリティクス変数を登録する方法もあります。
- [詳細設定]>[設定するフィールド]で、[+フィールド]ボタンをクリックします。
- [フィールド名]に
allowLinker
、[値]にtrue
を入力します。 - [詳細設定]>[クロスドメイントラッキング]で、自動リンクドメインに対象のドメイン名をカンマ区切りで入力します。たとえば今回のシチュエーションでは、
example-1.com,example-2.com
と入力します。 - トリガーは「All Pages」を選択します。
- [保存]ボタンをクリックします。
- プレビューモードに変更し、この後に説明する動作確認が済めば公開します。
gtag.jsでクロスドメインを設定する
gtag.jsをクロスドメイン対応するには、トラッキングコードを修正します。次のように既存のトラッキングコードは残しつつ、 <script>
タグ内の末尾に新しいプロパティを計測するためのコードを追加します。
<!-- Global site tag (gtag.js) - Google Analytics -->
<script async src="https://www.googletagmanager.com/gtag/js?id=UA-XXXXXX-XX"></script>
<script>
window.dataLayer = window.dataLayer || [];
function gtag(){dataLayer.push(arguments);}
gtag('js', new Date());
gtag('config', 'UA-XXXXXX-XX');
// ここから追加
gtag('config', 'UA-YYYYYY-YY', {
'accept_incoming': true,
'linker': {
'domains': ['example-1.com', 'example-2.com']
}
});
// ここまで追加
</script>
- 「ここから追加」と「ここまで追加」の間の6行を追加します。
- ”UA-XXXXXX-XX”部分は従来のトラッキングID、”UA-YYYYYY-YY”部分はクロスドメイントラッキング専用の新しいトラッキングIDに読み替えてください。
- 「example-1.com」や「example-2.com」の部分も実際のドメインに置き換えてください。
なお、初めてgtag.jsのトラッキングコードを設置するときは、gtag('config', 'UA-XXXXXX-XX');
を次のように変更して設置します。
gtag('config', 'UA-XXXXXX-XX', {
'accept_incoming': true,
'linker': {
'domains': ['example-1.com', 'example-2.com']
}
});
ユニバーサルアナリティクスでクロスドメインを設定する
analytics.js(ユニバーサルアナリティクス)をクロスドメイン対応するときも、トラッキングコードを修正します。既存のトラッキングコードは残しつつ、 <script>
タグ内の末尾に新しいプロパティを計測するためのコードを追加します。
<script>
(function(i,s,o,g,r,a,m){i['GoogleAnalyticsObject']=r;i[r]=i[r]||function(){
(i[r].q=i[r].q||[]).push(arguments)},i[r].l=1*new Date();a=s.createElement(o),
m=s.getElementsByTagName(o)[0];a.async=1;a.src=g;m.parentNode.insertBefore(a,m)
})(window,document,'script','//www.google-analytics.com/analytics.js','ga');
ga('create', 'UA-XXXXXX-XX', 'auto');
ga('send', 'pageview');
/* ↓↓ ここから追加 ↓↓ */
ga('create', 'UA-YYYYYY-YY', 'auto', 'crossdomain', {allowLinker: true});
ga('crossdomain.require', 'linker');
ga('crossdomain.linker:autoLink', ['example1.com', 'example2.com']);
ga('crossdomain.send', 'pageview');
/* ↑↑ ここまで追加 ↑↑ */
</script>
- 「ここから追加」と「ここまで追加」の間の6行を追加します。
- ”UA-XXXXXX-XX”部分は従来のトラッキングID、”UA-YYYYYY-YY”部分はクロスドメイントラッキング専用の新しいトラッキングIDに読み替えてください。
- 「example-1.com」や「example-2.com」の部分も実際のドメインに置き換えてください。
なお、ユニバーサルアナリティクスは1世代前のGoogleアナリティクスのトラッキングコードになるため、gtag.jsへの移行をお勧めします。
WordPressでクロスドメインを設定する
WordPressのテーマやプラグインでは対応できない高度な設定になってきます。
以下のいずれかの対応を検討します。
- WordPressにGoogleタグマネージャーを導入する
- header.phpを変更し、クロスドメイントラッキング用のトラッキングコードを埋め込む
- 関連記事:Googleタグマネージャーの使い方
目標設定を変更する
クロスドメイントラッキングの設定に関連して、必要になる作業としては、目標の到達ページの変更があります。
これは、ホスト名を連結するビューフィルタを設定したことにより、GoogleアナリティクスでのURLパスが変更になるためです。具体的には、URLパスの先頭にドメイン名が追加されます。
例えば、https://example.com/cart/thankyou が到達ページのときは、次のようにexample.comを付けたパスに変更します。
変更前の到達ページ | 設定後の到達ページ |
---|---|
/cart/thankyou | example.com/cart/thankyou |
クロスドメイントラッキングの確認方法
クロスドメイントラッキングは、以下の3点を中心に確認するとよいでしょう。
アナトミーで確認する
アクセス解析&SEO分析ツール「アナトミー」のPV分析機能を使えば、クロスドメイントラッキングを設定したドメイン内の各ページのPV数を一覧で確認できます。

クロスドメイントラッキング設定したサイトが全部タイルとして表示されていれば、クロスドメイントラッキングを正しく設定できています。
クロスドメイントラッキングを設定したはずのサイトのページのタイルがなかったり、クロスドメイントラッキングを設定していないはずのサイトのページのタイルが存在する場合は、設定がうまくいっていない可能性があります。見直してみましょう。
リアルタイムレポートでURLを確認する
Googleアナリティクスのレポートを開き、[リアルタイム]>[コンテンツ]を選択します。クロスドメイントラッキング対象の全ドメインがここにリストアップされているかどうかを確認しましょう。
ドメインをまたぐリンクをクリックしてURLを確認する
クロスドメイントラッキング設定では、ドメイン間のリンクに_ga
パラメータが自動で追加されるので、_ga
パラメータが追加されるかを確認します。
リンクをクリックしても、URLに_ga
パラメータないときは、トラッキングコードもしくはGoogleタグマネージャーのタグ設定に誤りがあるので、見直してみて下しさい。
弊社でもクロスドメイントラッキングを行っていますので、うまく行かない方はシンメトリックのWebサイトにアクセスして動作を確認してみてください。たとえば、画面右上の「アナトミー」という製品リンクをクリックすると、次のように_gaパラメータ付きのURLに遷移します。
https://siteanatomy.com/?_ga=1.2222222.33333333.44444444
まとめ
クロスドメイントラッキングを行うと、Googleアナリティクスの「参照元」「前のページ遷移」といった指標がドメインをまたいだ場合でも正しく記録されるようになります。サイトをまたいだ導線分析にはピッタリですね。
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